2021.07.13

「ありがとう」を伝える新しいコミュニケーションから生まれた、
販売者と消費者を超えた関係性

贈り主様
京つけもの ニシダや 辻村 安典様、辻村薫様
お宛名
株式会社ツカサ様宛
プラン名
限定商品・サービスお届けプラン

京都駅より車で5分の今熊野に店舗を構える、昭和11年創業の「京つけもの ニシダや」様。
売り上げの大半を占める「しば漬風味 おらがむら漬」は、創業者である祖父の辻村安右衛門さんの代から引き継がれた人気商品です。

代々卸販売は行わず、3代目となった今も店頭やインターネットでの直接販売にこだわっているニシダや様。それにより培われた信頼関係と変わらぬおいしさから、地元のお客様をはじめ根強いファンが多くいらっしゃいます。

そんなニシダや様がお礼を伝えたかったお相手とは?
そして、このプロジェクトからどんな贈り物が生まれたのでしょうか。

サンタデリバリーの二人を交え、辻村安典様、薫様ご夫妻にお話をうかがいました。

名物「しば漬風味 おらがむら漬」ができるまで

ーまずはニシダやさんのご紹介をお願いします。

安典:昭和11年に、祖父の辻村安右衛門が創業しました。祖父は滋賀県の野洲出身なんですが、9歳のころに両親と死別してしまって、京都の「西田青果店」に丁稚奉公に出ます。そこで手伝いをしたのち、青果業以外の商売をする約束で27歳で独立。「西田青果店」の「西田」を継承して「ニシダや」を創業しました。

最初はなんでも屋みたいなことをしていたそうですが、祖父は漬物についての研究を重ねていたそうです。大原名産の柴漬けにヒントを得て、「もっとおいしくできないか」と考えたみたいですね。本来の柴漬けの味はわりと癖があるのですが、発酵させないで酢で味付けをして、食べやすく仕上げました。そうしてできたのが、「しば漬風味 おらがむら漬」です。

それを店頭に並べたら大ヒット。「甘みがあって食べやすい」とばんばん売れるようになり、漬物屋一本でやっていくようになりました。それ以来、「しば漬風味 おらがむら漬」は当店を代表する商品となっています。

薫:そのほかにもさまざまなお漬物をご用意していますが、今も売り上げの8割くらいを占めていますね。

「もっと楽しいことを取り入れてもいいんだ」という自信

ーサンタデリバリーとの出会いは何だったのでしょうか?

薫:サンタデリバリーの岩崎さんが運営している、『アート×ワーク塾』に参加したのがきっかけです。そこの生徒として、同じくサンタデリバリーの西尾さんと出会いました。自己紹介のときに「漬物店を経営しています」と話したら、西尾さんも物流の会社を経営していると教えてくださって。いろいろお話をする中で、「今度『サンタデリバリー』でこんなサービスを立ち上げるのでいかがですか」とお声がけいただいたんです。

ーそのときはどんなふうに感じましたか?

薫:むちゃくちゃ楽しそうだなと思いました(笑)。

実はそれまではニシダやの経営を立て直すのに必死で、数字のことばかり考えていて切羽詰まっていたんです。もっとポジティブに考えられるきっかけが欲しいなと思ったのが、『アート×ワーク塾』に参加した理由でした。そこでの時間で、もっと楽しいことを取り入れてもいいんだとか、自由にやってもいいんだと、自信をつけてもらえて。「こうあるべき」なんてなくて、「変わった漬物屋として生きていってもいいのかな」って感覚になったんです(笑)。それで、ぜひ一緒にやりたいです、とお返事をしました。

西尾:僕も、薫さんの経営のお話を聞きながら、「一緒に何かできたらいいな」とは思っていたんです。その中で実際にニシダやさんのお漬物を食べて、ファンになっていったんですよね。このサービスを立ち上げるときに、いちばんに思い浮かんだのがニシダやさんでした。

ー安典さんはどう思われていましたか?

安典:僕はその話を聞いたときイメージが全然つかめなかったんですけど、単純に「いい機会だな」と思いましたね。お客様にお礼を言いに行くってことは、先代のときにもなかったはずですし、お話ができるいい機会かなと。

ーこれまでとは違う、お客様との新しいコミュニケーションの形ですよね。ちなみに、贈るお相手として株司会社ツカサ様とマコト運輸株式会社様を選ばれた理由は何だったのでしょうか?

安典:ツカサさんもマコト運輸さんも、もう長い間うちの商品をお中元やお年賀に使ってくださっているんです。毎年たくさんの商品を、全国の取引先さんに配ってくださっていて。いつもご愛顧いただいているのに、直接お礼を伝えられたことがなかったなと。なので、これを機にお礼を伝えにいこうと考えました。

「贈る」ことに対する価値観のすり合わせ

ープロジェクトはどんなふうに進んでいったのでしょうか?

岩崎:社長の戸惑いもごもっともで、我々も初めての案件なので、とにかく仮説検証を繰り返しました。まずはアイデアをどんどん出して「一緒にできそうなことはありませんか?」と。そこでキャッチボールしながら、アイデアを育てていった感じですね。

安典:最初に出してもらったのが、「似顔絵を描いて、感謝の気持ちを寄せ書きにするのはどうか」というアイデアだったんです。でも正直に言うと、僕はその色紙のサンプルを見て「これは持っていけへんで」と思ってしまいました(笑)。なぜかというと、ものすごく大きかったから。これは飾るわけにも捨てるわけにもいかないし、もらった方も困るだろうと。

薫:私はこの色紙を見たとき「すごい!」って思ったんですよ。だから夫のその言葉を聞いて、「京都の人は、そういうことまで考えるんだな」と思いましたね。私は静岡出身で、あとさき考えない県民性なので(笑)。

ーそれは、「贈る」ことに対する価値観のお話ですね。「渡したらびっくりしてもらえるかな」と思う人もいれば、「いやいや、実際困るだろう」と思う人もいる。では、「贈る」価値観のすり合わせから始まったということですか。

岩崎:そうなんです。それで二つ目のアイデアとして「オリジナル商品」のお話をしたんですよ。僕たちとしては、手間がかかるので難しいかなと思っていたのですが、それが大いに盛り上がって。

安典:せっかくやるなら、特別でサプライズ感のあるものにしたいなって思ったんです。

薫:初めは「商品開発しよう!」みたいな感じだったんですが、私はそれは……ちょっと大変すぎるだろうと(笑)。

ーその中で、現実的な手段としてコラボレーションを選ばれたという。

安典:そうなんです。前々からお付き合いのある、焼き菓子製造の石田老舗さんにお願いししました。

実は、お礼先である株式会社ツカサさんと、石田老舗さん、そしてうちのそれぞれの前社長がお友達同士なんですよ。そういう関係性もあるので相談もしやすく、コラボする意味合いもあるかなと。

岩崎:我々も一緒に石田老舗さんの工場に行って、社長直々に相談に乗っていただいたんです。その中で、おぜんざいと佃煮のセットのアイデアが出たんですよね。

安典:うちが扱っているものと合うお菓子って何かなと話していたら、おぜんざいとの組み合わせはどうかと。それで、石田老舗さんがオリジナルで用意してくださいました。

ー商品開発も魅力的ですが、もともとあった商品で関係性のある方とコラボレーションするというのも、意味があってすごく素敵なプレゼントですね。包装はどんな感じにしたんですか?

西尾:僕たちが掲げている「『届ける』体験をもっと豊かにする」という考え方のもと、まずは持っていくもの自体を良いものにするために、いちから包装を考えました。特別に仕立てたコラボレート商品のために、世界にひとつのラッピングを施そうと、桐箱に金色のステッカーを貼って。

岩崎:ここでご提案した金色のステッカーは、今後プレミアムな商品展開を行うときにも使えるのではないかと採用いただきましたね。

ー今後の展望ともマッチしたんですね。

岩崎:サンタデリバリーとしても、「届ける」を単発で終わらせるのではなく、そこから何が生まれるのかを大事にしたかったんです。

「届ける」から生まれた、販売者と消費者を超えた関係性

ーそしてついにお届けのときですね。まずは株式会社ツカサ様に行かれたということですが。

西尾:アポイントメントは僕がとったのですが、感謝の気持ちを伝えにいきたいと言ったらすぐ快諾してくださいましたね。もともとの信頼関係ができているのでスムーズでした。

岩崎:お届けには、ニシダやさんとサンタデリバリーで一緒にうかがいました。ニシダやさんのお二人から直接お渡ししていただいたんです。

ー贈ったときの反応はいかがでしたか?

安典:「え、どしたん?」みたいな(笑)。ちょっと気恥ずかしい感じでしたね。配達にはうかがったことがあったんですが、こうして改めてお礼にうかがうのは初めてなので。仕事の話だけじゃなく「最近ゴルフ行ってるの?」とか、普段しないプライベートな話もできてよかったです。

薫:主人も私もなかなかお会いできていなかったから、本当に良い機会でした。これがなかったら、うかがうことはなかったんじゃないかな。

岩崎:そこで、これまでのフィードバックもいただけたんですよね。たとえば、「かさばらない大きさだから贈りやすい」とか「毎年大量に注文するから分納してもらえるのは助かっている」とか。

安典:そういうフィードバックをいただく機会もなかったので、本当に良い機会でした。

ーマコト運輸さんではいかがでしたか?

薫:マコト運輸さんはお祖母様・お母様・娘さんと三代続く企業さんなのですが、とてもアットホームに迎えてくださって、事務所じゃなくてお家の中まで入れてくださったんですよ。それで、食卓でお話をさせていただきました。

安典:マコト運輸さんには、お漬物全種類が入ったコンプリートセットを持っていったのですが、一個一個取り出しながらいろんな感想をくださいましたね。特に「お茶漬けがおいしい」とお褒めくださったりして。

薫:マコトさんのお祖母様は、うちの近所のご出身なんです。だからもともと知ってくださっていて。地元愛が強い社長ですし、お互いに三代目なので「これからもがんばれ」と応援してくださいました。「新しいことをしようとすると反発もあると思うけど」と(笑)。

ーなるほど、共通の背景をお持ちだったんですね。そういう話って普段なかなかできないですよね。

安典:はい、すごく距離が近づいた気がしましたね。

西尾:両方とも「なんて幸せな瞬間に立ち会えているんだろう」という感覚がありました。「届ける」という行為から、販売者と消費者を超えた関係性が垣間見えて。自分自身もそこに立ち会えて、すごく勉強になったしいい時間を過ごさせてもらいましたね。

岩崎:それまでの打ち合わせの大半は、「あの方たちはどうしたら喜んでくださるんだろう」という問いに向かって一所懸命考える時間でしたよね。マーケティング的に考えると、ともすれば「いかに儲けるか」に主軸を置いてしまいがちですが、こんなふうにピュアに相手のことを考える時間って貴重だなと思いました。本当に最高な時間でしたね。

「価値のあることだから絶対にやりたい」という確信に変わった

ーこのプロジェクトを通して、よかったことや反省点はありますか?

安典:よかったことは、やっぱりお話できたこと。またいつか続きをお話したいなと、次に来店されるのがますます楽しみになりました。それから、店舗でも特別な贈り物としての商品を展開するのも必要なのかなと感じましたね。そのまま販売するんじゃなくて、実はこんなサービスもあるんですよと提示できるようになったらいいのかなと思います。

反省点としては、もっとサプライズ感が出せたらよかったなってことですね。でも現実問題、突然訪問するのは難しいし。いきなり行って、パフォーマンスなんかして驚かせたいんですけどね(笑)。

岩崎:サプライズはずっとおっしゃっていましたよね。それはこちらの宿題だなと思います。でも、3年目あたりになったらいけるんじゃないでしょうか。「今年はニシダやさん、どんなふうに来るんやろ?」みたいな(笑)。

ー確かに、これが続くと関係性も少しずつ変化していくと思うので、届け方も自然と変わっていくかもしれませんね。薫さんはどうですか?

薫:贈り物を何にするか、お客様のことをよくよく考えることができた経験は、日常の仕事にも活かせるなと感じています。プロジェクト進行中の試行錯誤から、思っていた以上の学びをもらいました。

私はもともとオンラインショップの担当をしていたので、接客経験が少なかったんですよ。売り上げがいくらかという数字ばかり見ていたけれど、お客様に実際にお礼を伝えることで、「こんなに支えていただいていたんだな」と実感できて。その気持ちをずっと忘れずにいたいです。お顔が見えないお客様にも「この方に喜んでいただきたい」という心の持ち方を教わった気がしますね。

反省点というか次の課題としては、主人も話していましたが、うちの店でも贈る方の気持ちを込められる特別包装を用意したいなと思いました。コストもかかるしどうかなぁと思っていたのですが、自分がやってみて「これは価値のあることだから絶対にやりたい」という確信に変わりましたね。お店でも、会えないぶん気持ちを表現できるような包装ができたらいいなと思います。

ーサンタデリバリーの二人はいかがでしたか?

岩崎:お時間をいただくには成果を出さないとと、プレッシャーもあったのですが、ニシダやさんがこれまで培われたものに背中を押していただきましたね。そもそもの関係性や信頼残高があったので、何をもってしてもいい時間になるだろうなと。ニシダやさんにとってはそれが当たり前なことなのかもしれませんが、その培ってきたものをより広く伝えるともっとファンが増えるだろうなと思っています。

西尾:サービスを実現した第一弾で、どうなるかわからない中を一緒に楽しんでいただけて感謝しています。今後の意気込みとしては、ニシダやさんにはいろんな切り口でのファンがいらっしゃるので、どんな個人のお客様がいらっしゃるのかをもっと知りたい。そしていろいろなお客様にお礼を届けられる機会があれば、ぜひご一緒させていただきたいと思っています。

ー最後に、サンタデリバリーに対する期待や要望はありますか?

安典:次は個人のお客様向けにサービス展開ができたらおもしろいですよね。たとえば、のしがみの代わりになるようなことができたら素敵ですよ。別料金をいただいて、「お中元」が「サンタデリバリー」になったらすごいことになりますよね。

薫:ホームページに「特別な包装をお求めの方へ」みたいな注意書きをつけて、サンタデリバリーの特別な発送や包装を頼むようにできたらいいんじゃないかなって思っています。

岩崎:激励をありがとうございます。目指すはサンタクロースなので、がんばります!

西尾:ありがとうございました!